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看護領域 基礎看護学

教員

指導教員   水戸 優子
指導補助教員 加藤木真史
       渡邉 惠
科目担当   佐々木杏子
       長島 俊輔

研究室紹介

   基礎看護学とは、看護の基本構成要素である「人間」「健康」「環境」「看護」という概念の本質を学問的に問う領域です。そのため探究する素材「テーマ」は、概ね何でもありです。ただし、概念や用語にこだわりながら研究を進めるので、複雑な看護現象の探究の場合には、時間を要することが否めません。着手している研究手法は、動作解析、自記式質問紙調査法、インタビュー調査法などです。モットーは、「研究は粘り強く取り組むべし!」です。

 

担当科目紹介

1.基礎看護学特論?基礎看護学演習
博士前期課程の看護専門科目です。看護の基本構成要素である「人間」「健康」「環境」「看護」という概念について探究します。ナイチンゲールの看護覚書きの抄読会から始まり、臨床看護の理想と現状、課題の解決案の検討などゼミ形式で展開します。演習は、大学院生の研究課題に沿いながらその周辺の理論や知識の探究を行います。
2.看護倫理

博士前期課程の看護専門科目です。看護現象の倫理とともに生命倫理や職業倫理も含めて哲学的知識、近年の倫理的問題についてゼミ形式で学習していきます。基礎看護学領域教員が担当する他に、看護倫理に著名な先生が、非常勤講師やゲストスピーカーとして授業を担当してくださっております。さらにディベートや受講者による課題別プレゼンテーションがあります。

3.フィジカルアセスメント
博士前期課程の選択科目(CNSコースは必修)です。複雑な健康問題をもつ対象に、適切かつ効果的な臨床判断を行うために必要なフィジカルアセスメントの知識、技術を修得します。
4.包括支援看護学?包括支援看護学演習

博士後期課程の保健福祉専門科目看護系の科目です。この科目は、病院を拠点とした包括支援と地域(在宅)を拠点とした包括支援を基軸としながら有機的で成長する看護システムの構築を目指す科目です。基礎看護学領域の他、地域看護領域、精神看護領域、看護教育学領域の教員が担当し、履修した院生の研究テーマに応じて、探究する内容を調整、重みづけしながらゼミ形式で展開していきます。

5.多職種連携システム開発演習

博士後期課程の選択科目です。保健医療福祉に関わる地域ケアマネジメント、病院?施設ケアマネジメントにおける多職種それぞれの役割および連携、チームアプローチによるシステムのダイナミックスを学びます。さらに課題解決の困難事例を検討し、当事者の目線および各職種の専門性および専門性を超えた視点での課題解決とシステム(組織、体制、資源、制度活用、サービス、質保証)のあり方を検討します。

看護学特別研究?保健福祉学特別研究

特別研究はその院生さんの関心、こだわり、経験を大切にしつつ、基礎看護学領域教員が指導できる範囲で指導を行っていきます。我々で不十分な場合には、外部指導員の助言を得ます。そのネットワークは充実しております。これまでの指導させていただいた修士論文?博士論文を掲載しました。

修士論文

2023年度

 「新人看護職員を初めて指導した実地指導者の困難に関する探索的分析」

2020年度

 「急性期病院における排尿自立ケアに関する看護師の学習ニーズの把握と学習プログラムの検討」

2019年度

 「集中治療室(ICU)において積極的な治療から終末期医療への移行に関わる看護師の困難感と援助の実際」

 「看護学生が臨地実習において『相手の立場に立って考えた』体験の分析」

2017年度

 「日本の看護における『全人的ケア』の概念分析」

 「回復期リハビリテーション病棟における脳血管疾患患者の歩行の自立に向けた看護師の判断と医療チームへのアプローチ」

2013年度

 「臨地実習中にインシデントを体験した看護学生に対する看護教員の指導の実際」

2012年度

 「救急外来において、看護師が行う患者の心理的アセスメントの実態」

2011年度

 「看護師が気管内吸引の終了を臨地的に判断する『めやす』についての考察」

2009年度

 「脳卒中による摂食?嚥下障害がある患者に対するエキスパートナースの食事の援助技術に関する研究」

博士論文

2019年度

 「医療?介護関連肺炎リスク患者の看取りを支援する在宅ケアモデルの開発」

教員紹介

水戸 優子

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 教授  大学院 副研究科長

 

北海道大学医療技術短期大学部看護学科卒業後、北海道大学医学部附属病院に勤務。その後、聖路加看護大学(当時)編入学、同大学大学院博士前期課程、博士後期課程修了。博士(看護学)。札幌医科大学助手、東京都立保健科学大学(当時)講師、神奈川県立保健福祉大学准教授を経て、2012年より現職。

社会活動:看護人間工学会理事長、日本看護技術学会理事。

著書:『看護学テキストNiCE基礎看護技術 改訂第3版』(2018、南江堂)[分担執筆]、『計画?実施?評価を循環させる授業設計』(2016、医学書院)など多数。

大好きなもの:赤毛のアン、スヌーピー、映画鑑賞

趣味:お仕事(ブルドーザーのように)、旅行

座右の銘は「ガールズ ビー アンビシャス!」

研究活動①「移動技術の探求」

移動技術の探究を25年以上取り組んでいます。水戸の博士論文は「車椅子移乗介助者の足位置に関する生体力学的分析」でした。2008年からは、日本看護技術学会移動動作評価班に属し、移動技術のエビデンスの明確化、よい技術の普及活動を行っております。2018年から科学研究費基盤Cを獲得し、日本看護技術学会移動動作評価班を拠点にしつつ、用具を使った移動介助技術の普及に努め、今日まで取り組んでいます。2022年5月に用具を使って楽に移動介助Q&AVer.3を、日本看護技術学会HPで公開しているとともに、全国の病院に冊子を提供しています。移動技術のエビデンスや普及活動に関心のある方は是非一緒にやりませんか。

 用具を使って楽に移動介助を!Q&A(日本看護技術学会Webサイト)

 

研究活動②「看護教育のICT?DX化」

看護教育のICT、DX化を受けて2021年からAR(拡張現実)を用いた学習教材(コンテンツ)の開発に取り組んでいます。ハードウエアは、スマートグラスの“BT-300”(セイコーエプソン株式会社、東京)とBluetoothヘッドセットを使用し、コンテンツ作成のためのソフトウェアは、“現場作業支援ソリューション”(NECソリューションイノベーター株式会社、東京)を使用しています。現場作業支援ソリューションはARデバイスのスクリーン上に作業内容を投影し、合成音声により作業指示を読み上げるソフトウェアです。また、音声認識システムにより作業の工程を声のみで進めることができ、ハンズフリーでの作業記録が可能です。このハードウエアとソフトウエアのもと、看護技術コンテンツを作成し、効果的な看護技術教育が可能になるよう取り組んでいます。

加藤木 真史

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 准教授

研究活動①「離床を促す看護に関する研究」

外科病棟での臨床経験から、術後の早期離床に関心があります。術後患者の離床は、食事、排泄、社交などの“生活行動”の再開によって実現される(加藤木, 2013)にもかかわらず、医療者は患者に“歩行”を促す状況があります。そこで、「歩行を促す場合」と「生活行動を促す場合」とで、術後の離床や回復に違いがあるのかを比較しました(Katogi., 2020)。その結果、「生活行動を促す場合」で離床が促され、心身の回復をもたらすことが示唆されました。 現在は、生活行動の視点で離床を促す離床看護プログラムの普及活動と、内科的治療を受ける入院患者の離床看護について研究しています。

研究活動②「排便のアセスメントに関する研究」

便秘から下痢までを含む排便困難を、客観的指標のみでアセスメントできるツールがないという課題に対し、2週間の排便記録からフローチャートで排便パターンを分類するアセスメント方法を開発し(加藤木ら, 2020)、臨床における有用性を検証してきました(菱沼ら, 2021)。現在は、開発したアセスメント方法を自動化(アプリケーション化)し、臨床現場での適応とその効果を明らかにすることを目指しています。本研究テーマに関連して、日本看護技術学会温罨法班の活動と、日本看護科学学会 「看護ケアのための高齢者の便秘時の大腸便貯留アセスメントに関する診療ガイドライン」システマティックレビューチームの活動にも携わっています。

渡邉 惠

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 講師

研究活動①「看護実践能力向上にむけた効果的な看護教育に関する研究」

進化し続ける医療現場において「基礎看護」の役割は何か、看護基礎教育で何を教授すべきかに興味?関心があり、臨床と教育の乖離解消に向けた看護教育のあり方に関する研究を継続しています。近年は、コロナ禍を経て測定用具?方法が多様化した「バイタルサイン測定」に焦点をあて、初年次学生の実践能力向上のための教育プログラム開発に取り組んできました(渡邉ら,2022)。この活動の中で、実践能力向上には臨床現場のリアルな状況を基盤としたトレーニングが重要であることが分かり、最近では実臨床における心の整え方や状況対応能力の向上、継続教育のあり方に関する研究にも取り組んでいます。

 

研究活動②「多職種連携(IPW)、多職種連携教育(IPE)に関する研究」

近年のヘルスケア領域ではICTを活用した多部門?他施設間でのデジタル情報の共有が推進されていることから、2022年度から模擬電子カルテを用いた多職種連携教育(IPE)の開発に携わっています。4年次学部生の多職種連携(IPW)能力向上に向け、全学科教員で研究チームを組み、演習プログラムの実装と評価を継続的に行っています(渡邉ら,2024)。

佐々木 杏子

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 講師

研究活動「看護ケアの普及?実装?持続可能性に関する研究」

エビデンスに基づく看護技術?プログラムが医療現場で導入されること、その後継続し続けること、時には新しい技術に置き換わること、に関心があります。実装?持続可能性に影響する要因や構造を明らかにし、効果的?効率的に実装?持続していくための方略を明らかにすることを目指しています。現在は主に脳卒中患者さんを対象とした看護ケアについて研究しています(今後は広げていきたい)。

長島 俊輔

神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科 講師

研究活動①「シフトワーカー(交代制勤務労働者)の生活と健康」

看護師をはじめとする多くの医療従事者は、患者さんの命を守るためシフトワーク(交代制勤務)という日勤と夜勤を含む勤務体制で働く必要があります。しかし、“昼に活動し夜に睡眠をとる”というリズムで生活をしている私たちにとって、夜に働くことは大変な負担であり、夜勤中のパフォーマンスや将来の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。本研究テーマでは、看護師の個別性に沿ったシフトワークへの適応方法を明らかにすることを目的に、最適な生活方法や環境調整の方法について研究しています。

 

研究活動②「夜間の睡眠を促進するのに効果的な生活や環境調整方法に関する研究」

私たちは、“昼に活動し夜に睡眠をとる”というリズムを基に生活をしています。しかし、24時間化社会が当たり前となった今日では、夜に満足に眠れないという悩みを抱えている人は少なくありません。本研究テーマでは、サーカディアンリズムの視点から夜間の睡眠に介入できる看護ケアを検証?開発しています。

修了生の声

大学院は自分と対峙する時間 学びを新人看護教育に活かす

総合病院で夜勤ありの勤務をしながら、長期履修制度を利用して、3年間の学生生活を送りました。看護師として自分ができることを見つめ直したいと思い、入学しましたが、この3年間は自分と向き合う時間がたくさんあり、自分の思いや考えを言語化する力や理論的に物事を考える力を身に付けることができたと思います。また、エビデンスに基づいた臨床実践やチームでの協働、リーダーシップの重要性について深く学ぶことができました。

新人看護職員を指導する実地指導者についての研究を行い、人材育成や教育プログラムの立案、役割に合わせた教育的支援やサポート体制の構築が必要であると感じています。大学院での経験を活かし、現在は看護主任として、教育委員のメンバーとして、新人看護職員の研修やOJT教育に携わっています。

(2024年3月 博士前期課程修了 大須美貴さん) 

受験生へのメッセージ

基礎看護学領域といえば、臨床看護師の方からすると、「今更…。」というイメージがあるかもしれませんが、臨床に長くいる方こそ基礎看護学領域で研究に取り組んでいただきたいです。事実、これまで修了した方の半数の方は臨床看護のことをテーマにしています。テーマは、最初に述べたように、何でもありです。ただし、皆さんの関心、こだわり、経験、主体性が大切です。

基礎看護学研究室のドアをノックしてみませんか。

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